危惧している自動車メーカー

2017/03/30

世界で唯一のロータリーエンジンを実用化

この記事は2010/11/09 に書きました。

　私が最近危惧している自動車メーカーがあります

　それは「マツダ」です！

　最初にお断りしておきますが、私は野球でいうと広島カープのファンです

　どうしてあんな弱小チームを応援するかというと、親会社であるマツダのパイオニア精神が好きだったからです

　世界で唯一のロータリーエンジンを実用化し、こだわり続けているエンジニア気質が好きで、そこからカープファンになりました

　しかし今日のような時代に、こだわり続けるエンジニア気質は大変危険です

　といっても会社の体質として、ロータリーエンジンを開発した技術陣が、大きな発言権を持つことは考えられますし、そういう声を無視することが企業を存続させる道だと分かっていても、現実には難しいとことも知っています

　さて私がマツダのどこが危ないか？と考えているかというと、「マツダの新型車はガソリン車でありながらリッター３０キロ走る」という記事を読んだからです

　今、自動車業界はガソリン車か？電気自動車の分かれ目の時期に来ていると思います

　これは業界にとって大変な時ですが、なにも自動車業界だけがそのような危機を迎えたわけではありません

　近くではフイルム写真からデジタル写真に移行した、カメラ業界がありました

　カメラ、特にフイルム一眼レフを制作していた高級カメラメーカーは、ニコン・キャノン・ペンタックス・ミノルタ・リコー・フジ・コニカなど多数ありました

　デジタル写真が台頭してきたとき、これらの高級カメラメーカーには二つ、または三つの道が考えられました

　つまり、フイルム写真の一眼レフメーカーとして行くか？、デジタルに移行するか？、あるいはまったく違う第３の道を模索するか？という決断です

　結果は皆さんご存じのように（知らないかな？）、ニコン・キャノン・フジは生き残り、ペンタックス・ミノルタ・リコー・コニカなどはカメラメーカーとしては、生き残ることが難しかったと言わざるをえません

　とくにペンタックスは、一眼レフメーカーとしてファンを持っていただけに、事業転換が出来なかった代表です

　ニコン・キャノンは高級一眼レフメーカーとしての地位を捨てるほどの決断をして、生き残りました

　特にキャノンは、高級一眼レフメーカーとしての時代よりも、今日のデジタル機器メーカーとして繁栄しています

　じつは同じような歴史は、なんども繰り返されています

　たとえば１９世紀の海では、帆船と蒸気船という動力形式の違う船が、主要海上輸送の覇者の座を争っていました

　正確にはかつての主流は帆船だったのが、その座を蒸気動力に奪われる歴史の時であったのです

　歴史の結果を知る私達には、「いつまでも帆船にしがみついているのは、おろかなことだ！」と単純に考えることができます

　しかしその歴史の大転換点の渦中では、そういう考えができないのです

　カティ・サークと言えば、今日でもウイスキーの名前に残る帆船の名前です

　その名帆船の歴史を、ごらん下さい

「中国とヨーロッパとの貿易を東インド会社が独占していた時代には、紅茶は18ヶ月ないし24ヶ月かけてロンドンまで運ばれてきた。この独占が1834年に終了し、中国のいくつかの港で自由貿易が出来るようになると、多くのヨーロッパの船主が中国貿易に参入してきた。とりわけ、イギリスの国民的な飲物である紅茶をいかに新鮮なまま届けるかには高い関心が集まった。最初に届けられたその年の一番茶は高値で取引され、船主や船長は莫大な利益と名誉を得ることができた。

1850年には、ついに年内に新茶が届けられた。12月3日アメリカの新鋭帆船オリエンタル号が、1500トンの新茶を積み込んでロンドンに入港し、船価の2/3にも及ぶ運賃を稼いだのである。このニュースはイギリスにとって大きな衝撃となり、このティーレースに参戦すべく、紅茶輸送のための快速船ティークリッパーが多数建造された。

ティークリッパーは外洋で高速が出せるよう、通常の帆船に比べ前後に細長い形状をしていた。港湾内で小回りの利かないこのような船型が可能となった背景には、蒸気機関を備えたタグボートが普及してきたことが挙げられる。

カティサークの誕生カティサークの最初の船主となったジョン・ウィリス ( John Willis ) は1850年代より Lammermuir、Whiteadder といったティークリッパーをティーレースに参戦させてきたが、勝利することは出来なかった。 1868年,ジョン・ウィリスは、最速のティークリッパーの建造を依頼する。ハークレス・リントン ( Hercules Linton ) の設計による船体は高い安定性を有し、他のティークリッパーに比べ荒天時の取り扱いが容易であった。

カティサークは、中国からイギリスまで107日から122日で紅茶を輸送することができた。ティークリッパーとして極めて優秀な成績であったが、最短輸送期間の記録を更新することも、ティーレースに勝利することもできなかった。

カティサークの前に立ちはだかったのが、サーモピレーである。 1872年、カティサークとサーモピレーは熾烈な競争を演じた。両船共に6月17日に上海を出港。カティサークは南東の貿易風を捕らえると、サーモピレーを最大400海里と大きく引き離した。そのような中、8月17日、悪天候によりカティサークは舵を破損してしまった。応急処置が行われたものの、その間にサーモピレーに追い抜かれてしまった。結局、サーモピレーの115日に遅れること1週間、カティサークは122日でイギリスに到着した。しかし、帆船同士の白熱したティーレースとは裏腹に、この頃を最後に帆船による紅茶輸送は急激に衰退して行くこととなる。

カティサークは、オーストラリア航路で、後に羊毛の輸入に従事することになり、そこは最新鋭の快速帆船、ロンドン－シドニー間で７２日間という大記録を打ち立て、蒸気船を追い抜くなどの活躍を残した。

紅茶輸送の衰退帆船は石炭を搭載する必要がないため積載量が大きく、給炭地に寄航する必要もない。また船体に用いている鉄は紅茶を劣化させると信じられていたために、蒸気船が普及した後も、しばらくの間は帆船が紅茶輸送の主役であった。しかしスエズ運河の開通により、状況が大きく変化した。スエズ運河はほとんど無風であり、帆船が通過できないのである。そのため、紅茶輸送の主役も蒸気船へと移行していく。」

　このように、帆船は蒸気船よりも遅かったから、歴史から消えたのではありません

　むしろ最新の蒸気船よりも、技術的に成熟した帆船の方が速かったのです

　しかしスエズ運河を帆船は渡れないという、致命的欠陥で帆船は蒸気船に主役の座を奪われました

　これはマツダが新型エンジンで、ハイブリッドよりも高燃費の車を造ることに、似ていると思いませんか？

　しかし時代の流れは、誰がみても電気自動車に移りつつあるのです

　「スエズ運河を帆船は渡れないという、致命的欠陥で帆船は蒸気船に主役の座を奪われました」

　もしガソリンスタンドが消滅する事態になったら、いくら高燃費の新型エンジンでも、消費者が見向きもしないことは明らかです

　私が、マツダに対する危惧は、このような歴史的観点によるものなのです

　じつは、このような歴史の転換点では、人々の美意識が変わることが本当は大きな要因です

　つまり単純にいうと、「帆船は時代後れでカッコ悪い」のです

　「ガソリン車は排気ガスをまき散らすので、カッコ悪い」ので、人々には魅力的に見えなくなるのです

　しかし、ガソリンエンジンを造りつづけてきた技術者には、その「人々が抱くカッコ悪い！」が見えないのです