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第五回利用可能性ヒューリスティックとは?M.H.ベイザーマン D.A.ムーア理論解説

      2021/02/14

第五回利用可能性ヒューリスティックとは?

目次

1.「利用可能性ヒューリスティック」原因にプライミング

2.「利用可能性ヒューリスティック」「条件」に気が付かない

3.「利用可能性ヒューリスティック」確証バイアス


頭が悪いとは、ヒューリスティックのことを言います。

人の思考は「きっちり論理的思考」と「惰性で流され処理」に分かれますが、じつは「惰性で流され処理」の方が多用されています。

なぜならそれが楽だからです。

惰性で流され処理」思考をヒューリスティック処理とも言いますが、人が多用するヒューリスティック処理がわかれば人の心を読むことがたやすくなります。

これが科学的テレパシーの原理です。

前回は「株で儲ける話」でした。

なぜ儲けられないのか?がわかると、それを取り除いたところにあるのが、「株で儲ける話」になります。

そして、ご存知だと思いますが、株で損をする原因は心理的な思い込み、あるいは自分の判断の間違いを認められないことがほとんどです。

 

1.「利用可能性ヒューリスティック」原因にプライミング

「自分の判断の間違いを認められない」の原因にプライミングがあります。

『記憶とは情報とも言い換えることができるが、あなたの脳内に雑多な情報が格納されている

それを使って、物事を判断しながら、毎日を過ごしている

ところが(ここになかなか気づけない)情報の量が圧倒的に多いので、テキトーな情報のひっぱり出し方しかできていない

それがプライミングである

最初に刺激された情報に紐づけされた情報ばかりが、判断の材料にされるのである

その結果、株を購入したという自分の判断が間違っていないことを補強する情報ばかりが、判断の材料にされるのである』

これを避けるには、他人の意見を求めることです。

知人友人の意見でなくても、誰の意見でもいいので「Yahoo知恵袋」なんかでもかまいません。

その意見のうち、自分がもっとも嫌いだと思うものが「あなたに必要な意見」である可能性が高いものです。

なぜならそれは、あなたの脳が意識的に排除した情報に近いからです。

今回ももあなたが株で損しない情報の続きです。

まず、次の「非常に難しいクイズ」から入ります。

これが解けたら、あなたは非常に優秀な人です。

解けなくても91%の人ができないので、心配しなくても大丈夫です。

**クイズ(確証バイアス)**

ここに四枚のカードがある

1・表が見える(数字の3)

2・表が見える(数字の4)

3・裏が見える(悪魔の顔)

4・裏が見える(天使の白水着)

仮説 「偶数のカードは裏が悪魔」

あなたはこれを証明するために、二枚だけめくっていい

どれをあなたは選ぶべきだろうか?

1.数字の4と(悪魔の顔)

2.数字の4と(天使の白水着)

3.数字の3と(悪魔の顔)

4.上記以外の方法

多くの人(91%)は「数字の4と(悪魔の顔)」を選んでしまう

しかしこれは不正解なのである

「数字の4と(悪魔の顔)」を選んで分かるのは、この4枚のカードのうち、「数字の4」のカードの裏が悪魔であること、悪魔のカードの表が偶数かそうでないか、がわかる

問題文を見てみよう

ここにはある条件が隠れていたのだ

仮説 「偶数のカードは裏が悪魔」ということであるが、これはここの4枚のカードに対してだけ適応できる

そしてあなたがカン違いしやすい点がある

それは「奇数のカードの裏は(必ず天使の白水着)」と無意識に思ってしまうことだ

仮説にはそういう意味はない

ここまで言っても理解できない人は本当に多い

おわかりだろうか?

「奇数のカードの裏が(悪魔の顔)」であっても、仮説には反しないのだ

仮説は奇数のカードには言及していないから

ただ仮説には偶数のカードの条件だけが書かれているので、奇数のカードは「どうでもいい」のです、じつは。

だから『3・裏が見える(悪魔の顔)』をひっくり返して奇数だっったとしても、仮説を検証できないことになります。

仮説を証明するには、天使の白水着と偶数が裏表になっているカードがあるかどうかがわかることです。

それには『裏が見える(天使の白水着)』をめくることです。

これの表が奇数なら、仮説が半分検証できたことになります。

つまり正解は、【2.数字の4と(天使の白水着)】だったのです。

これもプライミングがなせる業です。

私たちは最初に、「偶数と悪魔の顔」と言われると、それを証明する情報ばかりを探そうとするのです。

利用可能性ヒューリスティックです。

それの証明に反する検証を探そうとは思いつかなくなるのです。

じつは、これ以上に大きな問題があります。

それは「最初に、「偶数と悪魔の顔」と言われると、」『自動的に』、《奇数と天使の白水着》を対応させてしまうのである

こういう間違いは非常に多いです。

再度言いますが、このクイズの質問で問われているのは「偶数と悪魔の顔」の関係だけなのです。

奇数の方は言及されていないのです。

言及されていないにも関わらず、私たちは自動的に反応して《奇数の裏は天使の白水着》と早とちりするのです。

《奇数の裏も悪魔の顔》は思い至ることが出来る人は非常に少ないです。

これがヒューリスティック処理の怖ろしさです。

このようなカード遊びだけにそれが適合されるなら問題はないのですが、実際は私たちの決断の多くがこの仕組みに支配されています。

以前、大問題になったスタップ細胞の論文ねつ造問題もこれが原因です。

「スタップ細胞はあります!」と叫んだ美しい女性科学者を思い出す人も多いでしょう。

2.「利用可能性ヒューリスティック」「条件」に気が付かない

ある株を買おうと思ったとき、あなたはその株が値上がりするという、自分に有利な情報ばかりに注目する心の状態になっています。

その時は「条件」に気が付かないのです。

上のクイズで言うと「奇数のカードの裏は(必ず天使の白水着)」と無意識に思ってしまうことです。

株式投資で言うと、「(ゴールデンクロスが発生した時)と(株価上昇)」がセットで必ず起きると、無邪気に思い込んでしまうのと同じです。

パソコンで株式投資することが当たり前になると、数多くのテクニカル分析指標が使えるようになりました。

RCIとかRSIとかMACDとかがそういう分析指標です。

株式分析指標は(天使の白水着)みたいなものだ

上のクイズと同じで、表が奇数であることを必ずしも約束しない

しかしそういう分析指標を造った人は、自分の分析方法に大きな自信を持っています。

だからそれに有利な情報しか見れないので、万能の方法であるかのように宣伝してしまうのです。

今はそれにインターネットとパソコンという、数理分析に長けた道具がセットになっているので、ますますこの傾向が助長されています。

あなたが理数系なら、数理分析の罠に陥る確率が非常に高いはずです。

3.「利用可能性ヒューリスティック」確証バイアス

これを確証バイアスと言いますが、確証バイアスの原因になっているのがプライミングであるというのは知られていなません。

じつは株式投資理論(ファイナンス理論)でも、確証バイアスの罠は広く知られています。

例えば新型コロナ肺炎のパンデミックが広がったとき、世界中が不況になるので、株価は下がると予想した人は多かったでしょう。

実際、日経平均株価は2400円付近から2020年の3月17日に16358円にまで急落しました。

ところがその後、6月には23000円にまで回復したのです。

2020年3月17日に16358円にまで急落した時、ほとんどの投資家はこれからしばらくは下がると予想したと思われます。

「しばらくは下がると予想」すると、プライミングが起きて、「下がる」という情報しか目に入らなくなるのです。

しかも新聞テレビは「大暴落だ」「新型コロナ不況だ」とはやしたてるのですから。

これでは強気になれるはずがありません。

しかし現実は、違いました。

わずか三か月で、23000円にまで回復したのです。

(悪魔の顔の裏に天使がいた)ような感じです。

投資家は何を信じていいのか、わからないだろうと思います。

このような思い違いを避けるために、ファイナンス理論投資方法では、次の方法を勧めています。

『 確証バイアスへの対抗手段として、投資家は「議論の為」反対意見の採用を試すことができる。

また一つのテクニックとして、自分の投資が破綻することを想像し、次に なぜ失敗したのか最も説得力のある説明を考える方法がある』

つまり「自分が次はこうなるに違いない」と思うことと正反対のことを書き出してみるのです。

書きだすことで、自分の予想が明確になります。

あえて反対の理由を考える

そしてその「正反対のことが正しい」という理由を探してみるのです。

これをすることで、「自分が次はこうなるに違いない」と思うことと、「それの正反対のこと」両方を包含する世界が見えてきます。

両方を見てなお、「自分が次はこうなるに違いない」と思うことが正しければ、投資して成功する確率が高くなります。

少なくともあなたは、「両方の世界の存在」を知っているから、以前より賢いはずです。

※(天使の白水着)だからと、安易に判断を下してはいけない

悪魔は天使の姿をしていないと、誰が言った

まとめ

 

1.「利用可能性ヒューリスティック」原因にプライミング

2.「利用可能性ヒューリスティック」「条件」に気が付かない

3.「利用可能性ヒューリスティック」確証バイアス

人は自分の思考に自信があって、いつも正しい選択ができているはずだと思っています。

まさか自分が愚かな選択をしているとは、思いたくないのです。

そして正しい選択のためにきちんと論理的に、いつも正しく考えていると思いこんでいます。

そのような「正しい選択のためにきちんと論理的に考えるやり方」を、システマティック思考といいます。

しかし本当は、数多くのヒューリスティック処理に流されているのでした。

株式投資などにおいても、「自分が次はこうなるに違いない」と思った瞬間に、ヒューリスティック処理に流される人が非常に多いものです。

私にもそういう経験があります。

NHKのニュースで「今日株価が急上昇した」と報道された時が、その付近の最高値でその後下がることが多いと思っていたのです。

そういったん思い込むと、それを証明するデータばかりを集めるようになってしまい、それを否定する情報には目を背けるようになります。

私がそれを信じたい背景には、メディアは操作されているという陰謀論を強く信じたい気持ちがあったからだと思います。

しかし感情論は、正しい判断に役に立つことはありません。

感情はなぜ役に立たないのか?

説明します。

なぜ思った瞬間にヒューリスティック処理に流されるかというと、焦りの感情のせいです。

投資指標が今このタイミングが最高!と告げている時には、この瞬間を逃すと株価が上がり過ぎて儲けられなくなると思いこむことが多いものです。

そういう想像が自動的に動くので、焦って買いに走ってしまうものですね。

考えてみればこれは、新型コロナ肺炎が流行ったとき、マスクやアルコール消毒液が店頭から消えたのと同じ心理です。

そういう焦りの心理は、ヒューリスティック処理が働いている証拠なのです。

これに対し、システマティック思考には時間がかかります。

あなたが焦りの気持ちを押し殺して、タイミングを逃してもいいと思うことが損しない方法になります。

なぜなら焦りの気持ちがあるときは、天使か悪魔か、一方しか見えてない心の状態だからです。

自分の判断と正反対の理由を考えて、正反対の理由が正しいことを証明する事が出来れば、あなたは沈着冷静な人と呼ばれるでしょう。

両方を包含する世界が見えている人になれます。

もし「裏の顔」を持つ人に出会っても、それを見抜ける人になれることが間違いありません!

次回をお楽しみに

第一回はこちら

利用可能性ヒューリスティックとは?M.H.ベイザーマン D.A.ムーア理論解説

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筆者についてwatashi

長く建設会社に勤めながら瞑想行や神秘業を、科学的に研究する。

建設会社をリストラされたのを機に、中小建設業生き残り研究会を立ち上げ、建設会社の新規事業開発やマーケティングを研究する。

しかし、中小建設業生き残り研究会のDVDの売れ行きに悩み、瞑想中の啓示により変性意識開発のDVDを製作・販売する。

ネット事業に活路を見出し、瞑想による願望実現のホントとウソの研究にシフトしていく。

宗教色を排した、科学的瞑想の研究を勧める。

ヴィパッサナー瞑想はほとんど知らなかったが、本を一冊読んで「自分が行っていたのはじつはヴィパッサナー瞑想だった」と気がつく。

 

四国の山中に在住、時々東京や大阪でセミナーを開催。

 

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