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第四回利用可能性ヒューリスティックとは?M.H.ベイザーマン D.A.ムーア理論解説

      2021/02/14

第四回利用可能性ヒューリスティックとは?

目次

1.利用可能性ヒューリスティック「株で儲ける話」

2.利用可能性ヒューリスティック「心理の一貫化」

3.利用可能性ヒューリスティック「プライミング」

人の思考は「きっちり論理的思考」と「惰性で流され処理」に分かれますが、じつは「惰性で流され処理」の方が多用されています。

なぜならそれが楽だからです。

これをヒューリスティック処理とも言いますが、人が多用するヒューリスティック処理がわかれば

人の心を読むことがたやすくなります。

今回は「株で儲ける話」です。

「株で儲ける話」とは、「株で儲けられない話」でもあります。

というのは、なぜ儲けられないのか?がわかると、それを取り除いたところにあるのが、「株で儲ける話」になるからです。

そして、ご存知だと思いますが、株で損をする原因は心理的な思い込み、あるいは自分の判断の間違いを認められないことがほとんどです。

他人の心理を理解すれば、人生はお得です。

そして他人の心がわかるということは、同時に「自分の隠された欲望」もわかるということです。

頭が悪い人が人の心が読めないのは、「自分の隠された欲望」を知りたくないという恐れのせいもあります。

では夢が叶うプレミアム解説をお楽しみください。

 

1.利用可能性ヒューリスティック「株で儲ける話」

世界のホームラン王、王貞治の記録だ

1965年:42本
1966年:48本
1967年:47本
1968年:49本
1969年:44本
1970年:47本
1971年:39本
1972年:48本
1973年:51本

1973年に51本のホームランを打っている

さてあなたは翌年の1974年の王選手のホームランは、51本を上回ると思うだろか?

そうは思わない人が多いと想像できる

実際の翌年以降の、王選手のホームランはこうだった

1974年:49本
1975年:33本
1976年:49本

アメリカ、大リーグではバリー・ボンズ選手が年間73本のホームランを打った大記録がある

1997年 40本
1998年 37本
1999年 34本
2000年 49本
2001年 73本

これを見て翌年、80本近いホームランを打つと予想する人はいるだろうか?

73本の大記録をさらに上回ると思うだろうか?

ほとんどいないと思うし、実際翌年のホームラン数は46本だった


しかし「株価に関しては」これとは逆の予想をする傾向が強いのです。

日経平均株価が今年一番の高値をつけたという報道を受けて、さらに買い進む人が結構います。

逆の場合、日経平均株価が今年一番の暴落と聴くと、翌日もさらに下がると思ってしまうのですね。

野球選手のホームランであれば、最高値をつけた翌年は元に戻るだろうと予想できるが、株価になるとそういう思考ができなくなるのです。

上の表の王選手のホームラン数の平均を求めると、46.11 バリー・ボンズ選手は46.60です。

だからこれをグラフにすると、平均線の上下にでこぼこしたものになるので、平均以上に打った年の翌年か翌翌年は平均以下になるとだいたい予想できます。


なぜなら平均とはそういうものだからです。

実際ホームラン数はそうなっています。

しかし株価というものでは、そういう予想になりにくいのですね。

欲が絡むと当たり前のことが見えなくなります。

特に「自分が株を買っている時」は、そういう平均値に帰っていくとは思えないのです。

思えないというより、思いたくない、あるいは思うことができないと言った方が正解でしょう。

自分が関与している時に、平均値に帰っていくとは思うことは「自分が株を買ったという判断」が間違っていたことを意味します。

だからそれを認めたくない気持ちが起こるために、ホームラン数予想ではできることが、株価に関してはできなくなるのです。

2.利用可能性ヒューリスティック「心理の一貫化」

人には「心理の一貫化」というメカニズムがある

一度、軽い犯罪を犯すともっと重大な犯罪を犯しやすくなる

いったん3000円を借りると、300万円借りるまでに時間はかからなくなるのです。

処女がいったん禁を破ると、娼婦に落ちぶれるのは早いという人がいます。

「心理の一貫化」というメカニズムのせいです。

これと同じ仕組みで、人は株を買うとそれが上がるはずだという気持ちを捨てることができなくなります。

だから、「株を始めたい人はシミュレーションから始めましょう」というのは、意味がないのです。

ホームラン記録では平均値に戻ることが予想できる人が、最高値で株を買うと明日も最高値更新すると信じたくなるのと同じです。

その結果、現実を見たくない心理が起きてしまうのです。

シミュレーションと本当に投資するのはまったく違います。

株で大損したというのは、こういうケースが非常に多いのですがシミュレーションゲームではそれは学べません。

その後大暴落しても、「心理の一貫化」のせいで株を売ることがなかなかできなくなります。

現実を見たくない心理が発生するからです。

 

『うぬぼれ』

「心理の一貫化」のせいで現実を見たくない心理が起きるが、これと並んで最悪な心理状態を説明しましょう。

それは『うぬぼれ』である

『うぬぼれ』とは自分が優れていると信じたい心理から発生するのです。

実際「自分が優れていると信じたい心理」がないと、自分に自信がなくなるので、非常に生きずらくなります。

そういうことがあるので、『うぬぼれ』は必要な心のメカニズムでもあります。

しかし、弊害も大きいのです。

ここでクイズを

次の数列の背後にあるルールを、当ててください

2–5–8

あなたは3つずつ数字が大きくなると予想したと思う

しかしこれはその場合、正解ではない

なぜなら次のように続くからだ

2–5–8–12–16

これを見て、3つ以上数字が大きくなると思ったかもしれない

しかし次のようだったらどうだろうか?

2–5–8–12–16–16.1

じつはこれを造った人のルールは、後の数は前の数より大きい、というものだという

しかしあなたが最初「3つずつ数字が大きくなる」と予想したら、それに引きずられるのです。

これが心理学でいう、プライミングという心の仕組みです。

そして自説がもし正解でなくても、正解に近いはずだという思い込みに囚われるます。

だから次には、「3つ以上数字が大きくなる」しか考えられなくなるのです。

もし正解でなくても、正解に近いはずだという思い込みの原因は、『うぬぼれ』ていたいからです。

同じ心の仕組みで、株価が下がってもなかなか売ることができなくなります。

ずるずると持ち続けることになります。

すべては『うぬぼれ』ていたいという心のせいです。

自分の負けを認めたくない気持ちが、自分の負けをもっと大きくする

以前、バスケットボールのパスに夢中になっていると、ゴリラが通り過ぎても気づけない実験の話をしました。

これと同じことが起きるのです。

「自分の負けを認めたくない気持ち」というゲームをし始めると、ゴリラが通り過ぎても気づけなくなります。

ゴリラは大暴落の予兆です。

ゴリラが通り過ぎても気づけないのであれば、株価暴落の予兆も見えないでしょう。

カクテルパーティー効果という有名な話があります。

パーティーでみながざわざわ言っていても、気になる女性の声だけは聴き分けることができるという心理効果を言います。

逆に考えると、不必要な情報はシャットアウトしているのです。

だから、これも同じ心理メカニズムです。

「自分の負けを認めたくない気持ち」というゲームをし始めると、自分に都合の悪い情報は耳から入ってこられなくなるのです。

つまり「現実が見えない」状態に容易に陥るのです。

※あなたが今見ている現実は、現実なのだろうか?

3.利用可能性ヒューリスティック「プライミング」

私たちは物事を判断しながら、毎日を過ごしています。

そしてその判断の材料にしているのが、記憶です。

記憶とは情報とも言い換えることができますが、あなたの脳内に雑多な情報が格納されています。

私たちはそれを使って、物事を判断しながら、毎日を過ごしているのです。

ところが(ここになかなか気づけない)情報の量が圧倒的に多いので、テキトーな情報のひっぱり出し方しかできていないのです。

それがプライミングです。

最初に刺激された情報に紐づけされた情報ばかりが、判断の材料にされるのです。

その結果、株を購入したという自分の判断が間違っていないことを補強する情報ばかりが、判断の材料にされるのです。

しかし、現実はそういうあなたの思考過程とは関係がないのです。

だから、現実の動きとあなたの判断が合っている時は儲けることができるが、それが長続きしないことになります。

現実的な例をあげます。

あなたは一週間前の夕食を思い出すことができるだろうか?

恐らくできないと思うが、普通のお父さんであれば毎夜奥さんの手料理を食べていると思う

その際、奥さんのレパートリーは決まっているので、だいたいこういうものを食べたとは想像できる

だからここでは、カレーとうどんにしよう

先週の木曜日の夜はカレーで、その前日はうどんだった

なぜなら奥さんは日記を書いていて、あなたにそうだと言ったからだ

あなたは納得すると思う

しかしそれは奥さんがウソをついていて、木曜日の夜は本当はうどんであったとしてもあなたは気づけるだろうか?

ほとんどの人は気づけない

本当は「カレー」「うどん」という順番であったのに、「うどん」「カレー」だと言われたら信じてしまうのです。

というのは人間の脳は「今」を重要視して、過去のことはどうでもいいと思っているからなんです。

その結果、『怖ろしいこと』が起きます。

あなたは過去のことを、正しい順番で思い出せなくなるのです。

もう一度言います!

あなたは過去のことを、正しい順番で思い出せない

「カレー」か「うどん」か?

 

これがどれほど『怖ろしいこと』なのか?

説明します。

2020年8月28日金曜日、安倍総理大臣が午後5時から記者会見をして、病気による総理大臣辞任を発表した

この安倍総理大臣の辞任が会見前の午後二時ごろリークされ、日経平均は600円も暴落した

さてこれを見たあなたが、一か月後にこれを思い出したとしましょう。

そうしたら「あの時○○していたら儲けられてたはずだ」と思うに違いありません。

2020年8月28日金曜日の朝の時点で日経平均先物を売っていたなら、大儲けできたに違いないと思うはずです。

なぜならあなたには、金曜日の朝の時点で次のことがわかっていたからです。

1.安倍総理が緊急記者会見を行うこと

2.安倍総理の体調が悪いという噂があったこと

3.しかし記者会見の内容は新型コロナ対策が中心だと言われていたこと

4.よく考えれば金曜日夕方五時というのは株価に影響しない時間

5.前回も安倍総理は任期途中で病気により退陣した

6.一部マスコミには退陣の噂があった

あなたが、一か月後にこれを思い出したとすると、次のように思うに違いないありません。

【俺なら(私なら)あの時ぼろ儲けできたに違いない!】

自分であれば正しく総理大臣辞任を予想できたに違いないと、確信するのです。

しかしこれは誤りである可能性が非常に高いのです。

そう、『うぬぼれ』です。

実際にそうであるなら、あの金曜日の朝、そういう行動ができていたはずです。

本当は出来ていないくせに、【俺なら(私なら)あの時ぼろ儲けできたに違いない!】と思うのです。

これが代表的な『うぬぼれ』の心理です。

俺は(私は)凄い奴、と思いたいのです。

さらに思い違いがこれに拍車をかける

上記1から6を読み返してほしい

実際はあの時(あの金曜日の朝)、あなたに分かっていたのは、次の三つだけだ

1.安倍総理が緊急記者会見を行うこと

2.安倍総理の体調が悪いという噂があったこと

3.しかし記者会見の内容は新型コロナ対策が中心だと言われていたこと

そして後から考えたとき、あなたが思いついたが次の三つである

4.よく考えれば金曜日夕方五時というのは株価に影響しない時間

5.前回も安倍総理は任期途中で病気により退陣した

6.一部マスコミには退陣の噂があった

これらを総合すると、安倍総理退陣で株価大暴落が読める

だからあなたは儲けられたと思ってしまうのである

しかしこれは「うどん」「カレー」の論理でしかないありません。

本当の順番は「カレー」「うどん」です。

上記4から6は、「うどん」なのです。

あの時点で上記4から6は、本当はわかっていなかったのです。

本当は1から3までしかわかっていなかったのが、記憶の逆転が起きて

1から6まですべてわかっていたかのように、思い出すのです。

その結果、『うぬぼれ』が起きるのです。

そして怖ろしいことに、一貫性の心理も働きます。

あの安倍総理退陣で本当は大儲けできたはずの俺(私)なら、次回あんなことが起きれば本当に大儲けできるとじてしまうのです。

しかし真実はひとつ(小学生名探偵のことば)

あなたにあの時点で判っていたのは、1から3までだけなのです。

これが真実です。


まとめ

 

1.利用可能性ヒューリスティック「株で儲ける話」

2.利用可能性ヒューリスティック「心理の一貫化」

3.利用可能性ヒューリスティック「プライミング」

人は自分の思考に自信があって、いつも正しい選択ができているはずだと思っています。

まさか自分が愚かな選択をしているとは、思いたくないのです。

そして正しい選択のためにきちんと論理的に、いつも正しく考えていると思いこんでいます。

そのような「正しい選択のためにきちんと論理的に考えるやり方」を、システマティック思考といいます。

しかし本当は、数多くのヒューリスティック処理に流されているのでした。

今回の説明は、

欲がからむと正常思考ができないと

『うぬぼれ』と、

「うどん」「カレー」の論理でした

ほとんどの場合、ヒューリスティックは間違っていることが多いのですが、それを訂正するのは至難のわざです。

なぜならヒューリスティック処理する人は、それ以外の考え方を想像できないのです

逆に言うと、ヒューリスティック処理ではなく論理的にものを考え、答えを出すことができれば

あなたは『本当の無敵の人』になれます。

次回をお楽しみに

 

第一回はこちら

利用可能性ヒューリスティックとは?M.H.ベイザーマン D.A.ムーア理論解説

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筆者についてwatashi

長く建設会社に勤めながら瞑想行や神秘業を、科学的に研究する。

建設会社をリストラされたのを機に、中小建設業生き残り研究会を立ち上げ、建設会社の新規事業開発やマーケティングを研究する。

しかし、中小建設業生き残り研究会のDVDの売れ行きに悩み、瞑想中の啓示により変性意識開発のDVDを製作・販売する。

ネット事業に活路を見出し、瞑想による願望実現のホントとウソの研究にシフトしていく。

宗教色を排した、科学的瞑想の研究を勧める。

ヴィパッサナー瞑想はほとんど知らなかったが、本を一冊読んで「自分が行っていたのはじつはヴィパッサナー瞑想だった」と気がつく。

 

四国の山中に在住、時々東京や大阪でセミナーを開催。

 

 - 行動意思決定論

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