【第2回】やってはいけない仕事第一位　のセミナーに潜入調査

やってはいけない仕事？

その仕事とは、印鑑の販売です。

10年ほど前に私は、いろいろな起業セミナーに参加していました。

その中の一つにあったのが「印鑑を販売する商売」のセミナーです。

たしか、名古屋での開催だったと思いますが、参加費は10万円以上だったと思います。

その内容は、エグいものでした。

これは前回の続きです

前回の記事はこちら

1・エグい内容

講師は言いました。

「まずですね。

印鑑を販売するのは、訪問販売です。

お店を開いて、印鑑を買いに来る客を待っていても、そんなにどんどん来ることはないと考えてください。

そんなことをしていると、一人も客が来ない日が続くと思ってください。

軽自動車で、中小零細企業を回るんです。

そういう会社は全国に五万とあります、というか500万とありますから訪問先に困ることはありません。

だいたい中小零細企業の玄関ドアをくぐると、事務所に机が並んでいて奥の方に社長の机があります。

社長室があるようなところは、かなり大きなところです。

入ったら名刺を出して、社長さんに会いたいと伝えるんです。

運よく社長さんがいたら、会社印を変えませんか？運気のいい会社印を格安で販売しています、とか当たりさわりのないことを言ってパンフレットを置いて帰るんです。

「よっしゃ、会社印変えよう」という社長さんはまずいません、なぜかと言うと今ので間に合っているし、変えるとなると申請しなおさなきゃいけないので面倒だからです」

ここでセミナー受講者はけげんな顔をしました。

「みなさん、これからが本番ですからね。

良く聞いてください。

帰り際に「社長さん、事務所のみなさんにご挨拶して帰ってもよろしいでしょうか？」と許可を取ります。

そして・・・・・」

中小企業の事務所（イメージ）

2・真のターゲットは？

「そして受付しているような、たぶん一番下っ端の女性から声をかけます。

名刺を渡して、「印鑑は姓名判断占いがかかせないんです。無料で姓名判断をしますから、ここにお名前を書き込んでください」と言うんですね。

ところがその用紙には、住所と生年月日を書く項目もあるんです」

と、講師は姓名判断用の用紙を見せました。

つまり、真のターゲットは占い好きの女性職員であり、最初は無料姓名判断で近づくのです。

社長がいない昼休みを狙っていくこともあります。

零細企業の事務所だと、留守番役の女性事務員が暇そうにしているオフィスは多いものです。

そういうところもねらい目です。

なにしろ売り込みの営業マンですから、訪問したとしても何の不思議もありません。

さて、姓名判断に移ったら、だいたいお決まりのパターンに持ち込みます。

「姓名判断のやり方はご存じでしょうか？

これは漢字の画数をいろいろなパターンで合計して、その数字から吉凶を占うものです」

ところがここに姓名判断の奇妙なところがあります。

奇妙なところ？

それは多くの流派があって、各流派で合計数の数が違ったりするのです。

くさかんむり　3画?4画？6画？

例えば「茂」はくさかんむりがありますが、これはふつう、3画だと思うでしょう？

ところがある姓名判断の流派では、古い書き方を使うので4画になったりするのです。

6画で数える流派もあります。

とにかく姓名判断というのはいいかげんというか、適当なことを言って、占い師の思い通りの吉凶の判断結果に導けるものなのです。

そして言います。

「あなたは全体運はそう悪くないんですが、恋愛運が少し悪いですね。

姓名判断結果の悪いこところは、印鑑で改善できるって知ってましたか？

例えばこの認印タイプの開運印鑑、通常一万円はするんですが今回は特別に無料でおつくりします。

いかがでしょう？

もしよかったら、ご住所もお書きください。

後で郵送でお送りします、もちろん送料も無料です」

と誘い込むのです。

前回も言いましたが、木製の印鑑なら原価45円で造れます。

ところが印鑑には印鑑ケースとか必要ですから、後で印鑑ケースを2千円で売っただけでも元が取れます。

縦書きはお金が流れるというこじつけ

3・悪のセールステクニック

セールス業界では有名なテクニックですが、「返報性の原理」というものがあります。

これは報酬を先に与えられたら、それを返さないといけないと感じる、心理的圧力がかかるというものです。

これは人間だけなく、サルにも当てはまることがわかっています。つまり本能なのです。

先に一万円の印鑑をタダでもらったから、何かで返さないと悪いなという気にさせるのです。

でも実際は、原価45円です。

その時に、あなたの運が悪くなるからこの印鑑で改善しないとヤバイと吹き込むのです。

事務所の女の子も一本すでに持っているのに、なぜそれが可能なのか？

ここが印鑑業界のいやらしいところです。

一万円だけど無料で造る印鑑が届いたら、今お使いの印鑑を送ってください。

由緒正しい方法でお祈りしていただいてお炊き上げ処分します。

そうしないと印鑑の中の霊が怒って不幸になりますから・・・

こういうことを言うなら、もうそれは「洗脳操作」になります。

さて、

じつは印鑑というのは、三本必要なのです。（と説得します）

一本はふだん使いの認印、もう一つは銀行印、そして最後に実印です。

認印はすでに無料で配っているので、他の二本を売り込みます。

まず、銀行印。

銀行印はお金が出ていかないようにするいわば守りの印鑑なので、特殊な字体が必要です。

そこで強力に開運するのが、横書きの印鑑です。

銀行印は他の人に取られるとお金を引き出されたりするので、他の人とは違う印鑑が必要です。

他の人とは違うのが一目でわかるようにしたのが、この銀行印専用の横書きの印鑑です。

こちらは認印より少し太めのタイプになります。

さて最も開運効果があるのが、実印なんです。

じつは実印の場合、女性は男性の印鑑と大きく違うところがあります。

何か、わかりますか？

それはお名前の苗字です。

結婚したら苗字が変わりますので、そうなったら実印を造り変える必要があります。

でもね！相手によって大事な実印を変えることがそもそも不吉なことなんです。

そこで、「女性の実印は名前にする」んです。

苗字じゃなく、名前をハンコにするんです、実印の場合。

これは他のところでは行っていない、当社だけの開運法なんです。

じつは銀行印も女性は名前にした方が後々便利だし、大吉なんです。

もちろん印材ももっとも太いタイプで、強力な運を引き寄せます。

とかなんとか・・・・

とにかくこうやって、開運の三本印鑑を売り込んでしまうわけです。

これは直接訪問して口頭で口説いてもいいし、認印を郵送する際のパンフレットでもいいんです。

そのお値段は、298000円です！！

二十九万円？

しかし今回は特別セール中なので、今だけ10万円引きの198000円です。

ただしお申し込みは、一週間以内にお願いします。

この機会を逃すと、超開運印鑑10万円引きの198000円では手に入らなくなります。

と、こういうパターンですね。

幸せな結婚

まとめ

中小零細企業のオフィスに売り込みに行くのは、社長に売り込むと見せかけてじつは違うターゲットを狙うためでした。

それは占い好きの若い女性職員です。

彼女らは恋愛話と運が良くなる話には目がありません。

その両方に通じる、開運印鑑のために姓名判断占いがこの悪徳商法のキモだったのです。

「あなたは恋愛運が悪いけど、開運印鑑でぐっと良くなります！」

それにしても、三本セットで198000円とは驚きです。

原価は2000円もかかっていないのですから・・・・

名前だけにする女性用印鑑というのは、既婚女性にも使えます。

離婚した時に便利だとか、とにかくなんとでも言えるわけです。

そしてまんまと購入した女性職員が、彼女のオフィスで他の女性職員にこれを自慢したりしたら

放って置いても、注文が舞い込んできますね。

本当のことを言いますと・・・・

開運印鑑で開運できるのは、それを売っている業者だけです。

※役所が印鑑登録をやめない限り、印鑑文化はすたれることがない

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