アメリカを襲った大竜巻、これでアメリカ人の気持ちに変化が起きる?
大規模な竜巻
アメリカのケンタッキー州やテネシー州など中南部の地域で、2021年12月10日夜から11日にかけて大規模な竜巻が相次いで発生しました。
ケンタッキー州のビシア知事は、11日夕方の会見で、少なくとも70人が死亡したとみられ、最終的に「死者は100人以上になるだろう」という見方を示しました。
「史上最大の竜巻の1つだろう。人々は家を失い、仕事を失った。これは悲劇だ。そして、何人の命が失われたのか、被害の全容がまだわからない」
バイデン大統領が発言しています。
このような災害で、アメリカ人の中に「最後の審判」を恐れる人が増えています。
日本人には理解しにくいその気持ちを明らかにします。
これを知ると、スエーデンの環境少女グレタ・トゥーンベリがなぜ受け入れられているのか理解できます。
1・キリスト教が原因
そもそもアメリカという国は、白人が多数移民して建国した国です。
その過程で、ネイティブ・アメリカン(インディアン)を迫害し、殺して土地を奪ったという罪悪感があります。
そのような罪は、キリスト教的に許されるものではありません。
さて、アメリカのふるさとであるヨーロッパでは宗教絵画が盛んでしたが、その中に奇妙な絵があります。
ヒエロニムス・ボスが描いた「楽園」です。
この絵は真ん中に楽園を描いたものがあって、左にアダムとイブの話、右に地獄が描かれている三枚構成の絵です。
そして左から右に時間が流れる見方をするのですが、意味することがよくわかないと言う意味で有名な絵です。
じつはヒエロニムス・ボスが言いたいことは簡単で、この絵は「旧約聖書のパラレルワールド」なのです。
アダムとイブがリンゴを食べなかった、パラレルワールドの話です。
聖書ではまず最初に、神が自分の姿に似せて、アダムを創ります。
そしてアダムの肋骨からイブを創ります。
二人は楽園で楽しく暮らしていましたが、「蛇」にそそのかされたイブがアダムと共に、リンゴの実を食べてしまうのです。
「蛇」は、悪魔の化身です。
リンゴの実は知恵の象徴で、そのため二人は羞恥心が芽生え裸をイチジクの葉で隠すようになります。
その様子から、リンゴの実を食べたことを察した神はアダムとイブを楽園から追放するのです。
そしてその後の聖書の話は知恵がついたために悪いことばかりする人間と、それに罰を与える神の話が続きます。
最後には、審判の日が来て、良い人は天国へ、悪人は地獄へ送られるのです。
ところが、ボスが描いた「楽園」の左の絵のアダムとイブは、リンゴを食べなかったとする様子があります。
そして、楽園の中央の絵には現代になってリンゴを食べている人々が描かれています。
右の絵は地獄の絵であり、未来を表しますが、ここにはリンゴを食べた人が地獄に行った様子が描かれています。
つまりリンゴを食べなかったアダムとイブの子孫もいつかは食べるだろうし、食べたものは地獄に行くということがこの絵の趣旨だと思われます。
この絵は1500年ごろに描かれたもので、ヨーロッパ人のキリスト教に対する基本的考えを表しています。
というか、旧約聖書はキリスト教だけでなく、ユダヤ教やイスラム教の聖典でもあるので、あの地域の宗教倫理の基本です。
そういう根本が日本人は理解できません。
何が問題になるのでしょうか?
2・環境少女がもてはやされる理由
つまり旧約聖書の通り読むと、人間の悪のすべての原因は「知恵の実」を食べたことになります。
そして人間の知恵が創りだしたものこそが、「科学技術」です。
この論理でもっとも攻撃しやすい技術が、「原爆・水爆」でしょう。
人類を滅ぼせる兵器である原水爆は、悪魔の兵器であって根絶しなければならないという論理が成立します。
そしてこれは、(建て前的には)誰も反対できません。
しかしその理屈の根本が「人類を滅ぼせる兵器」ではなく、「神の意思に背いた科学技術」であるとしたらどうでしょうか?
そうであるからこそ「原水爆が悪魔の産物」であれば、原子力も同じものになるのです。
同様に石炭・石油エネルギーも悪魔の産物です。
なぜなら、「神の意思に背いた科学技術」だからです。
一方で太陽光発電や風力が無批判にもてはやされるのも、科学の本質を知らない人々が「神の意思に背かない科学技術」と感じるからでしょう。
これこそが、環境少女グレタ・トゥーンベリがもてはやされる理由なのです。
彼女はアメリカで演説を行うために環境を汚す飛行機を使わずヨットで行きました。
帰りもヨットで戻ったのですが、一人の少女が欧州・アメリカ間の移動にもっとも少ないエネルギーで行くためにヨットが効果的だったかというと、それはありません。
効率を考えるなら、多くの旅行客と共にジェット旅客機を利用すべきだったでしょう。
それが「科学的結論」です。
だから科学を少しでも知る人たちは、彼女の行動を批判します。
上っ面だけだと批判します。
ところがキリスト教的な「原罪」に照らし合わせると、悪いのは「知恵のついた人間」なのです。
知恵のついていない少女の行動が科学的に愚かであっても、そっちの方が神の意思に適っているのです。
日本人には理解できない部分がこれです。
3・科学が悪魔の知恵だとすると
つまり聖書を文字通り解釈すると、現代の科学技術にまみれた先進国社会はすべて悪が支配する腐敗した社会だとなります。
病気になったら科学技術で治そうとせず、神の意思のままに死んでいくのが正しい人間の姿だとなります。
そもそも聖書自体にもおかしな部分があるのですが、そこは批判してはいけないことになっています。
たとえば「性的にみだらなことは罪」であるとなっていますが、アダムとイブは全裸であって子孫繁栄の行為を行うことが確実です。
子孫繁栄は、神のご意思だからです。
つまり後年の人間たちに「性的にみだらなことは罪」だと押し付けますが、最初のアダムとイブはやりほうだいです。
おかしいと思いませんか?
聖書を文字通り解釈すると、ツッコミたくなる部分が後から後から湧き出てきます。
しかしそれを批判することはタブーです。
具合のいいことに、聖書を批判するような人を「悪魔の知恵がついた悪い人」だと決めつけることができます。
中世の魔女裁判でもこの理屈は多用されました。
まとめ
アメリカを襲った大竜巻や大洪水、大寒波、森林火災、氷山の崩壊、氷河の消滅。
こういう自然災害に襲われた欧米人は「神の怒り」を恐れるのです。
その恐れは幼い頃にすりこまれた、科学的根拠のない怖れです。
日本人で言うと墓石に小便をかけると死者に祟られるぐらいの、科学的根拠のない、しかし怖ろしい気持ちです。
その西洋的科学的根拠のない怖れは、「科学的」なものを悪魔の産物として攻撃する性質を持っているのです。
だから、環境少女グレタ・トゥーンベリがもてはやされ、それに冷静に反論しようとする人はヒステリックに攻撃されるのです。
根本的な部分にあるのは、アダムとイブの原罪なのです。
※リンゴ殺人事件(樹木希林と郷ひろみの歌)
アダムとイブがリンゴを食べた日から*****が後を絶たない
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