池上彰やロシアの「専門家」はなぜプーチンを読み間違ってしまったのか?
2022/03/10
ロシア政治を研究し、
日本政府の国家安全保障局顧問(2018~20年)などを歴任した慶大総合政策学部教授の広瀬陽子氏
この人が、テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」に出演して、ロシアによるウクライナ侵攻について解説しました。
彼女は、「プーチン大統領の中では論理崩壊していると思う」と発言しています。
また、元NHKアナウンサーの池上彰氏も次のように発言しています。
1・信じられない!
「まさか21世紀になって、こんな光景を見ることになるとは。驚きと共に無力感に駆られる日々だ。
「国連は何をしているんですか?」と詰問されることがある。
それに対し、「国連の安全保障理事会には5カ国の常任理事国があって、拒否権を持っていることを学校の社会科で習ったでしょう」という答えしか持ち合わせていないことにも無力感を覚えるし、罪悪感すら持ってしまう。
核を脅しに使う国家元首が今もいるという現実は、「核廃絶」を訴え続けた日本の努力を虚しいものにしてしまった」
この人たちは、ロシアの国家元首であるプーチン大統領に対し、以前は正常な判断ができる、一種「立派な大統領」だという幻想を持っていたとしか考えられません。
だから今回のウクライナ侵攻と虐殺に対し、口々に信じられないと発言していると見て間違いありません。
自分の見込み違いを説明するために、「プーチン大統領は狂った」とも言っています。
しかしそれは間違いであって、人間の性質はもともとああいうものです。
そこらへんで繰り広げられる、下世話な闘争と同じ仕組みでプーチン大統領も行動しているにすぎません。
つまり今「プーチン大統領は狂った」と言っている人は、買いかぶりしていたのです。
国家元首であるから、国のため、世界のために立派な行動をできるはずだし、そうするべきだという思い込みがまさに買被りなのです。
プーチンは怒りに駆られやすい、ふつうのおっさんだと見ればすぐに彼の行動が理解できます。
それを「専門家たち」はまったく気づいていません。
3・ごめんで済むなら
「ごめん」ですむなら警察は要らないという言葉があります。
誰もが自分が悪いと思ったときには、反省して「ごめんなさい」を言うのであれば、警察の仕事はすごく楽になるでしょう。
これは言い方を変えれば、人々が経済的合理性だけを判断材料にするなら、悪事を働く人はいない、ということになります。
ところが、世に悪事のタネは尽きないのです。
カネだけで動く人はくみしやすい合理的判断ができる人
だから、人の行動原理は「経済的合理性」ではありません。
もし、人の行動原理が「経済的合理性」であるのなら、暴力団が存在することも不合理だし、彼らが縄張り争いの抗争を繰り広げることも不合理です。
縄張りを取られたと言って相手側組員を拳銃で撃ち殺して、自分は刑務所に10年以上収監されることが名誉だったりします。
「経済的合理性」からいうと、こんなことが起きるはずがありません。
ロシアの通貨ルーブルが暴落していて、早ければ3月16日にデフォルトするかもしれないと言われています。
それがわかっていて戦争をやめられないのは、「経済的合理性」では説明できません。
「経済的合理性」で人を理解できると思っている専門家は、間違えます。
ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン博士は、人の脳の働きには「システム1」と「システム2」があることを発見しました。
「システム1」は感情的思考で、「システム2」は論理的思考です。
カーネマン博士は、常に「システム1」の感情的思考が優勢であると見抜きました。
人は感情で行動して、論理的にそれを説明しようとします。
だから間違うのです。
下世話な闘争と同じ仕組みでプーチン大統領も行動しているにすぎないのですが、「専門家たち」は論理的にそれを説明しようとします。
「専門家たち」は、井戸端会議と同じ論理で説明できることでも、専門家と名乗っているので専門家らしい言葉で説明したがります。
だから、間違うのです。
3・田舎の選挙
昭和の時代の田舎の選挙はだいたい同じ感じでした。
買収や強迫が当たり前の選挙運動が繰り広げられました。
そしてその中心は、土建屋でした。
町会議員・村会議員のレベルでは、土建屋の社長が候補者になって、土建屋の社長どうしが戦うことも珍しくありませんでした。
しかし土建屋の社長さんが、経済的合理性だけで生きているならカネ儲けに徹して、町会議員・村会議員になろうとするのは不合理です。
そういうムラ型選挙戦が始まると、運動員が徹夜で地域の道を監視するのです。
相手側陣営の買収工作をする人を通さないようにするためです。
そして選挙事務所で毎晩、宴会みたいな選挙対策会議が行われます。
お祭り騒ぎなのです。
運動員や大将である候補者本人も、次第に高揚してきます。
そして相手側陣営だけには負けまいと、ヒートアップしていくのです。
その高揚感は経験したものにしかわからない快感なのです。
そして負けたら終わりという気持ちが、さらに高揚感を生みます。
瀬戸際で戦う感じが、とても快感なのです。
結局、買収資金も含めて500万円ぐらいのお金が動くことはザラでした。
最初は渋っていても、次第に気持ちが大きくなり、引くに引けなくなって大金を出すことになります。
プーチン大統領やロシア軍関係者の胸のうちにあるのは、これと同じ感情です。
人は「専門家」が思うような、経済的合理性なんかで生きているのでは決してありません。
まとめ
繰り返しますが、ダニエル・カーネマン博士は、人の脳の働きには「システム1」と「システム2」があることを発見しました。
「システム1」は感情的思考で、「システム2」は論理的思考です。
感情的思考は海馬や扁桃核などの、原始的な脳で行われます。
論理的思考は、大脳新皮質です。
海馬や扁桃核などの原始的な脳は、猿はもちろんネズミでも持っています。
カーネマン博士は、常に「システム1」の感情的思考が優勢であると見抜きました。
人は感情で行動して、論理的にそれを説明しようとします。
だから間違うのです。
この理論がノーベル賞を受賞しているのです。
人は経済的合理性なんかで生きているのではありません。
人は「破滅の予感」に酔いしれるときに快感さえ感じることができるのです
※瀬戸際で戦う感じが、とても快感
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